総合物流施策大綱(2021 年度~2025 年度)⑱

(4)物流・商流データ基盤の構築等
① SIP 等のデータ連携基盤の構築と社会実装
物流の効率化を実現するには、関係者間の地道な調整によるハードの標準化や商慣習の改革と並行して、いわばソフトの標準化としてのデータ連携の実現が必要である。この推進のため、2018年に始まった SIP の「スマート物流サービス」プロジェクトにおいては、物流・商流データ基盤を構築し、この活用を通じて、今まで連携の進んでいなかった事業者間での効率的な共同輸配送や異業種間物流のマッチングによる積載効率の向上等、データ連携の不足によって生じていた非効率を解決する新たなサービスやアプリケーションの開発を行っており、この社会実装に向けた取組を引き続き推進する。
物流・商流データ基盤の構築にあたっては、全ての物流に関わる情報が共有されることで実現する物流の将来像について、業種を超えて幅広い関係者の認識の共通化を図り、その障壁となり得る既存の商慣習やデータセキュリティの問題、競争領域の考え方の整理等に取り組む。また、その前提として、フィジカル空間におけるデータをサイバー空間に取り込むことが必要であり、外装サイズや荷姿、温度など輸配送の現場で必要な情報をデジタル化して取得・共有するため、AIや IoT 等の新技術を用いたデータ取得方法の開発と実装を合わせて推進する。
② データ基盤の共有や接続を通じたエコシステムの形成
付加価値の源泉となるリアルデータを利活用し、革新的な製品やサービスを生み出すデータプラットフォーマーが、経済への影響を高め、大きな付加価値を創造する可能性がある。業界ごとのデータ基盤を形成し、調達・生産や小売・消費も含むサプライチェーン全体の情報を統合することで、人手不足や生産性といった物流課題の解決を図るとともに、業界の垣根を越えたデータ基盤を形成することで、社会全体のリアルデータの利活用と、Society5.0 の実現を推進する。
特に、近年、求貨求車マッチングや倉庫シェアリング等のサービスを提供するベンチャー企業が、業界の垣根を越えた物流サービスを提供し、物流機能・情報の共用が進んでいる。今後、このような企業が、データやデジタル技術を駆使して物流課題に対する新たなソリューションを次々と生み出していけるようなエコシステムが形成されるよう、事業者間のデータ共有基盤の構築支援や標準 API の策定、デジタルサービスの担い手となるベンチャー企業の育成を支援する。
また、官民を含む様々な主体によってデータ基盤が開発・活用され併存している現状を踏まえ、SIP「スマート物流サービス」など複数の基盤を相互に接続させることで、中小も含む幅広い事業者が参画できシームレスに情報連携できる物流を実現する。
③ 国内の物流データ・情報と輸出入等の手続・プロセスとの連携
現状、紙、電話、メール等で行われている民間事業者間の港湾物流手続を電子化することで業務を効率化する「サイバーポート」を整備し、その利便性向上と利用促進を図るため、「ヒトを支援する AI ターミナル」との連携を推進するほか、NACCS 等他のシステムとの連携をさらに強化する。

④ 物流 MaaS の推進
商用車のコネクテッド化やデジタル技術も活用し、運送事業者・商用車メーカー・荷主等が連携しながら物流効率化を進めていく観点から、物流全体で実現すべき協調領域でのユースケースを検討しつつ、複数の商用車メーカーのトラック車両データを共通的な仕組みで収集するための検討・実証等を通じて、トラックデータ連携の仕組みを確立するとともに、荷台の空きスペース情報を可視化すること等による混載の取組を通じ、潜在的な共同輸配送ニーズの発掘・マッチングに
つなげる。
⑤ データ提供時における情報セキュリティ確保の徹底
個社・業界の垣根を越えてサプライチェーン上でデータを収集、蓄積、共有、活用するに当たっては、そのデータに関するセキュリティの確保が極めて重要である。企業の信用情報や個人情報の秘匿性、情報の信頼性が確実に保全され、サイバーテロの脅威から情報が守られる安心感がない限り、個人や法人からのデータ提供はおぼつかない。こうした企業の信用情報等の確実な保全のため、データ連携基盤の構築に当たっては、ブロックチェーン技術の活用などサイバーセキュリティの確保に向けた取組を強力に推進し、物流デジ
タル化のリスクを極力軽減する。