総合物流施策大綱(2021 年度~2025 年度)⑳

2:時間外労働の上限規制の適用を見据えた労働力不足対策の加速と物流構造改革の推進
(担い手にやさしい物流の実現)

今後、生産年齢人口の減少により、トラックドライバーや海運の担い手など、物流産業の労働力不足は更に拍車がかかることが予想される。
Ⅱ.(3)で述べたとおり、我が国の物流産業の生産性はここ数年も停滞していることに鑑みると、このまま将来にわたって生産性が改善されず、労働力の減少が続いた場合、現状の物流サービスが提供不可能になることも予想される。働き方改革関連法に基づき、2024 年度から罰則付きで適用されるトラックドライバーの時間外労働の上限規制も考慮すると、その可能性は決して遠い将来の話ではない。
トラックドライバーをはじめ、物流に従事する労働者の働き方については、輸配送を委託する発荷主や着荷主を含む物流関係者全体で見直すべきである。短いリードタイムやドライバーによる附帯作業などこれまで当然と思われてきた慣習について、今回の大綱策定を機に関係者間で改めて話し合い、必要な見直しを図ることが求められる。
また、物流に携わる労働者の社会的価値が高まる一方、商取引において、物流業務は無償で提供されていると誤解を招くかのような表現は見直しが求められるところである。
一方、物流事業者の効率化に向けた取組も必須である。輸配送業務を共同化するなど、協調できる部分は協調することに加え、季節波動など需要にムラがある状況においては、効率的に空きスペースをマッチングするほか、各種の交通機関や物流施設などの既存のリソースを有効活用するなど、革新的な工夫により物流の生産性を引き上げなければならない。さらに、自動化やデジタル化等の取組を通じて、車両の集中や庫内作業の遅れ等により発生する荷待ち時間を削減し、サプライチェーン上の無駄をなくしていくことも必要である。
さらに、物流のサービス水準維持のためには、新たな労働力の確保という観点も重要である。働き方の改善により、若年層を含む担い手の確保に最大限努めるほか、デジタル機器などを駆使し、業務内容を簡素化・汎用化することで、多様な労働力の確保に努めるべきである。
こうした労働力確保や輸配送の効率化を図りつつ、離島や山間部など物流需要の少ない地域における物流網の維持にも留意すべきであり、官民のみならず住民も巻き込んだ取組も求められる。
物流が社会において見直される中、こうした取組によりその担い手がゆとりを持って働ける魅力的な産業に変貌することで、「担い手にやさしい物流」が実現するものと考える。