総合物流施策大綱(2021 年度~2025 年度)⑪

(3)物流生産性及び労働力不足に関する代表的指標の状況と分析
(2)で整理したとおり、前大綱のもとで様々な施策が推進され、物流事業者のみならず、一定の荷主や消費者の間でも物流の重要性について理解が深まり、具体の取組に結びついてきたことは、大きな成果といえる。
一方で、前大綱下での物流生産性に関連する代表的な指標の変化は以下のとおりであり、定量的に見れば、未だ道半ばであると評価せざるを得ない。
・物流業の労働生産性:2015 年度 2,496 円/時 → 2018 年度 2,569 円/時
(参考6:全産業(2018 年度) 3,695 円/時)
労働生産性の向上のためには、物流事業者の売上高や物流従事者の賃金の増加、労働時間の削減等が必要であるところ、前大綱下において関連する取組が推進され、その成果が少しずつ出てきてはいるものの、物流産業の労働生産性は依然として全産業には遠く及ばない水準にとどまっている。
・トラックの積載効率:2016 年度 39.9% → 2019 年度 37.7%
時間指定やリードタイムの短い貨物が多いことに加え、共同輸配送やゆとりあるリードタイムの設定などの積載効率向上に向けた取組に対する荷主の理解を得ることが難しい等の事情から、トラックの積載効率は低迷している。

・宅配便の再配達率:2017 年度 16%程度 → 2020 年度 10%程度
(2019 年度 16%程度)
近年の EC 市場の拡大により、宅配便等取扱個数は 43.2 億個(2019 年)に上っているが、2019年度まではそのうち 16%程度が再配達となっていた。2020 年度は再配達率も下がっているが、新型コロナウイルス感染症の影響による在宅率の上昇など特殊要因の可能性もあることから、今後も低下傾向が継続するのか数値を注視する必要がある。
一方、トラックドライバーの有効求人倍率に着目すると、以下のような現状となっており、全産業と比しても労働力不足の度合いが高いことがわかる。これは、トラック運送業は依然として他産業よりも労働時間が約2割長い一方、年間賃金は約1~2割低く、職業としての魅力が他産業と比して低いことが一因であると考えられる。トラックドライバー以外にも、休日がない連続労働等により月間の総労働時間が長い傾向にある内航貨物船員や、倉庫における荷役作業等を行う
人員についても、労働力確保が課題となっている。
・有効求人倍率
貨物自動車運転手:2015 年度 1.72 倍 → 2020 年度 1.94 倍
(参考) 全産業:2015 年度 1.11 倍 → 2020 年度 1.01 倍