総合物流施策大綱(2021 年度~2025 年度)⑫

(4)新型コロナウイルス感染症に伴う物流を取り巻く環境の変化
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、総じてヒトに比べてモノの動きが相対的に活発化している現象を含め、物流を取り巻く環境は劇的に変化しつつある。
まず国内物流への影響について概括すると、BtoB 物流については、工場等での生産活動が停滞したことで素材や部品等の需要が減少し、海外からの原材料等の輸入も減少したことで低調な荷動きとなり、運送収入は大幅に減少している。一方で、BtoC 物流は、巣ごもり消費の拡大等の影響により EC 市場の規模が更に拡大し、2020 年度の宅配便取扱個数は対前年比で概ね 10~20%増加した。
現場の物流従事者は、新型コロナウイルス感染症の流行下でも継続してサービスを提供し、人々の生活や経済活動等を支える「エッセンシャルワーカー」として、改めて認識されており、そのご貢献に対して敬意と謝意を表する。
また、「ソーシャルディスタンス」など法人・個人の行動様式が変化している中、「非接触・非対面」が重視されることにより、物流サービスの形態にも変化が生じつつある。それを技術面で支える物流デジタル化の必要性が、これまで以上に多くの関係者に強く認識されている。
国際物流に視点を移すと、各国の生産活動や消費の減少に伴い貿易貨物が大幅に減少している。
航空物流については、旅客便の大幅減便に伴う輸送スペースの逼迫や運賃高騰などの影響が生じ、貨物チャーター便の設定等による対応が取られている。また、海上物流については、サプライチェーンが不安定となったことで、他国でのトランシップによる遅延リスクが顕在化しており、北米・欧州等と直接接続する国際基幹航路の日本の港湾への寄港が、我が国に立地する企業の国際物流に係るコストとリードタイム等の観点から重要であることが改めて認識されている。
さらに、世界的なロックダウン等により国際貿易が一時的に縮小した後、急速に輸送需要が回復したことや、海外主要港における滞船などから、世界的に海上コンテナ輸送力及び空コンテナの不足による需給の逼迫が生じており、その影響の長期化が懸念されている。
グローバルサプライチェーンは世界各地で寸断し、自動車部品や電子部品など、様々な物資の供給が途絶する等のリスクが顕在化した。サプライチェーンの脆弱性が露呈する中、その多元化や製造事業者の国内生産拠点の整備など、地域分散・リスク分散の考え方も強くなりつつある。
今般のコロナ禍を通じ、安定的なサプライチェーンを維持することが、人々の安全・安心な生活や企業の事業活動の継続に直結することが誰の目にも明白な事実となり、それを担う物流の存在感は国内外で飛躍的に高まったといえる。
こうした状況においては、物流を取り扱う全ての企業にとって、サプライチェーンの強靱化、物流の効率化が極めて重要な経営課題となり、物流の機能を最大限に発揮できる能力が、企業の競争力を左右する時代が急速に到来していると考えられる。