総合物流施策大綱(2021 年度~2025 年度)㉕
(3)労働生産性の改善に向けた革新的な取組の推進
① 共同輸配送の更なる展開
トラックドライバーへの時間外労働の上限規制の適用を見据えた労働力不足対策及び低迷している物流産業の労働生産性を引き上げる観点から、40%未満に落ち込み低迷しているトラックの積載効率の向上は最優先で取り組むべき課題の一つであり、積み合わせを工夫し、より少ないトラックでより多くの荷物を運ぶ共同輸配送の必要性が更に高まっている。
このため、共同輸配送の実施に必要なパレット等の輸送容器の活用のほか、積載情報や車両の動態情報等の物流データの共有、荷積み・荷卸しのタイミングの調整等に係るシステムの導入やAI 等新技術を活用したマッチングの効率化など、デジタル技術を駆使した取組を促進する。
また、これまで食品業界をはじめ同業種による共同輸配送は数多く実施されてきているが、異業種同士の共同輸配送についても積極的に推進する。
さらに、積載効率の向上に当たっては、荷姿・荷物荷重によっては車両の寸法や重量の制限によって向上が図れない事例も考えられ、必要な措置の検討を進める。
② 多様な交通モードにおける貨客混載の適切な展開
貨客混載については、これまでバス事業者と宅配事業者等との連携により、地方部における物流サービスと旅客運送サービス双方の維持のために実施されてきており、引き続きこうした取組を推進する。
また、現状においては、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う新しい生活様式への対応等により、有償での食料・飲料のタクシー輸送が認められるなど都市部における貨客混載の取組も進められている。また、新幹線や高速バスを活用した地方の農水産品の貨物輸送サービスなど多様な交通モードによる貨客混載も登場している。このような取組は旅客輸送網の維持に資するだけでなく、物流の効率化にも資することから、地域の交通機関の輸送力や経営状況、貨物自動車運送事業の供給力などの状況も勘案しながら、適切な展開を図る。
③ 倉庫シェアリングの推進
EC 事業の拡大等に伴い、荷物の保管需要の多様化が進展しており、保管の受け皿となる倉庫において保管需要の変化に迅速かつ的確に対応していく必要があることから、季節要因等多様な波動により生じる倉庫内の遊休スペースの有効活用を図ることにより、多様化する保管需要に対応する倉庫シェアリングの取組を推進する。
④ 季節波動を踏まえた自家用有償運送の安全面を配慮した活用の検討
近年の EC 市場の普及などにより消費者ニーズは多様化し、従前の季節波動にも変化が見られていることから、繁忙期における自家用車の活用について、より実態に即したものとなるよう制度の見直しを図る。なお、制度の見直しにあたっては、輸送の安全の確保やドライバーの適切な労務管理、荷主保護が十分に担保されるよう留意する。
⑤ 再配達の削減と新しい生活様式に対応した配送形態の構築・定着に向けた取組
再配達の削減に向けては、これまで国や関係事業者等が連携し開催してきた「宅配事業と EC 事業の生産性向上連絡会」や「置き配検討会」における検討なども踏まえ、オープン型宅配ボックスや置き配などの推奨を図ってきており、今後もこうした多様な受取方法を推進する。
特に新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、非接触・非対面による受取方法である宅配ボックスや置き配の活用などがクローズアップされている。このため、2020 年3月に公表した「置き配の現状と実施に向けたポイント」(置き配ガイドライン)に基づき、置き配の普及や運用の改善に努める。また、デジタル技術を活用した高機能型宅配ボックスの展開など宅配ボックスの設置を促す取組を更に推進するほか、接触や対面機会を極力減らしたラストワンマイル配送に係るモ
デル的な取組の構築・普及を進める。
⑥ ラストワンマイル配送円滑化の推進
都市内の荷さばき対策について、荷さばきスペースの確保に向け、共同荷さばき集配事業の導入と併せた共同荷さばき駐車場の整備や、物流を考慮した建築物の設計・運用の推進等の取組を促進するほか、適切な官民の役割分担の下、物流事業者や地域の関係者間の連携によるソフト・ハード両面からの路上荷さばき対策を推進する。また、自動配送ロボットを活用した持続的な配送サービスが可能となるよう、引き続き社会実装に向けた取組を推進する。