法令違反(1)監査と行政処分

 貨物自動車運送事業を行うには、定められた基準を満たしたうえで国土交通大臣の許可を得なければなりませんが、一度許可を取ってしまえばそれでよいというものではなく、事業を行っていく中で、事故の未然防止、法令遵守の徹底を目的とした国土交通大臣による監査を受けることになります。
 監査対象となる事業者は、下記のとおりですが、輸送の安全確保に支障を及ぼすおそれのある重要な法令違反の疑いがある事業者から優先的に実施されます。また、社会的影響が大きい事故又は違反が発生した場合には速やかに実施されます。
1 適正化事業実施機関や利用者等からの情報、街頭監査や事業用自動車への添乗調査の結果等により、法令違反の疑いがある事業者
2 事業用自動車の運転者(選任運転者に限らず、事業用自動車を運転した者)が第一当事者と推定される死亡事故を引き起こした事業者
3事業用自動車の運転者が悪質違反(酒酔い運転、酒気帯び運転、過労運転、薬物等使用運転、無免許運転、無資格運転、無車検運行、
無保険運行及び救護義務違反(ひき逃げ))を引き起こした又は引き起こしたと疑われる事業者
4行政処分等を受けた際に事業の改善状況の報告を命じられた事業者で、報告のための出頭を拒否したもの、改善報告を行わないもの又
は報告内容から事業が改善されたと認められない事業者
5 適正化事業実施機関が行う巡回指導を拒否した事業者
6 都道府県公安委員会、都道府県労働局、道路管理者等からの通知又は通報により、法令違反の疑いがある事業者
7労働関係行政機関又は日本年金機構から、労働者災害補償保険、雇用保険、健康保険又は厚生年金保険に加入していない旨の通報があった事業者
8 労働関係行政機関から、最低賃金法に違反している旨の通報があった事業者
9自動車事故報告規則第2条に定める事故で、自動車事故報告書の「事故の原因」及び「事故の種類の区分」が同一であるものを3年間に3回以上引き起こした事業者
10自動車事故報告書、事業報告書及び事業実績報告書等について、以下に該当する事業者
 ア. 所定の期限までに報告書等を提出しなかった事業者
 イ. 報告書等に虚偽の内容を記載した疑いがある事業者
 ウ. 報告書等に記載された内容に法令違反の疑いがある事業者
11事業用自動車のホイール・ボルトの折損による車輪脱落事故又は整備不良に起因すると認められる死傷事故を引き起こした事業者
12長期間、監査(街頭監査を除く。)を実施していない事業者(適正化事業実施機関による巡回指導があった事業者、安全性優良事業所(Gマーク)認定事業者は除かれることがある)
13貨物自動車運送事業者の輸送の安全確保義務(貨物自動車運送事業法第17条第1項から第4項まで、第18条第1項又は第22条第2
項若しくは第3項に規定する輸送の安全を確保するために遵守すべき事項をいう)違反が認められた場合であって、当該違反への関与が疑われる元請事業者
14貨物自動車運送事業者の輸送の安全確保義務違反について、元請事業者に対する下請事業者等からの苦情等により、監査を行うことが必要と認められる元請事業者及び下請事業者
15貨物自動車運送事業法第29条第1項の規定による管理の受委託の許可を受けた事業者であって、受託者に法令違反の疑いがある委託者たる事業者
16監査を受けた後又は2項若しくは3項に該当する事故若しくは違反が発生した後、行政処分等までの間に事業用自動車等を移動させた
事業者及びその移動先事業者であって、監査を行うことが必要と認められる事業者
17呼出指導の対象となったにもかかわらず、正当な理由なくこれに応じない事業者
18行政処分等を受けた際に、事業の改善状況の報告を命じられた事業者
19 その他事故、法令違反、事件、苦情等の状況を勘案し、監査を行うことが必要と認められる事業者

① 監査の重点項目
1 事業計画の遵守状況
2 運賃料金の収受状況
3 損害賠償責任保険(共済)の加入状況
4 自家用自動車(白ナンバートラック)の利用、名義貸し行為の有無
5 社会保険等の加入状況、賃金の支払い状況
6 運行管理の実施状況、整備管理の実施

② 監査の種類と実施方法
 監査の種類には、以下の3種類があります。
特別監査⇒引き起こした事故または疑いのある違反の重大性に鑑み、厳格な対応が必要と思われる事業者に対して全般的な法令遵守状況を確認する監査
一般監査 ⇒特別監査に該当しない、監査を実施するに至った事項に応じた重点項目を定めて法令遵守状況を確認する監査
街頭監査 ⇒街頭において、事業者を特定せずに実施する監査
 監査の方法には、以下の3種類があります。
臨店による監査⇒事業者の営業所等に立ち入って実施するもの
呼出による監査 ⇒事業者の代表者等を、地方運輸局又は運輸支局等へ呼び出して実施するもの
街 頭 監 査 ⇒事業用自動車の所在する場所に立ち入って実施するもので、街頭にて実施するもの