法令違反(2)行政処分等
貨物自動車運送事業法には、法令違反に対し、その程度により、輸送施設の使用の停止、事業の停止、許可の取消などの行政処分が行われるという規定が定められています。行政処分の内容は、多くの社会的に影響の強い重大事故の発生によって、輸送の安全確保に関して、年々厳しくなっています。これは、法令遵守を第一に事業運営を行うことの重要性が広く認識されてきた結果といえます。
行政処分には、軽微なものから「自動車その他の輸送施設の使用停止処分」、「事業の全部又は一部の停止処分」及び「許可の取消処分」が定められております。
これに至らないものとして、軽微なものから、「勧告」、「警告」が発せられることになり、上記、行政処分と合わせて、「行政処分等」となっています。
① 処分日車数制度
事業者に対する行政処分は、定められた基準により、違反行為ごとに行政処分等の量定が行われ、基準日車数を合計したものが付与されます。
日車数については、違反の内容、初違反、再違反、または累違反かによって、定められた基準にもとづき決定されます。(日車数については、違反の内容や、運行管理の状況等によって、加重、軽減されることがあります。
② 違反点数制度
違反点数制度とは、違反営業所に与えられた「処分日車数10日車までごとに1点」、「事業停止処分とされた違反行為ごとに30点」とする違反点数を与える制度です。違反点数は、行政処分が行われた日から3年を経過する日(安全性優良事業所(Gマーク認定事業所)に認定されている又は処分前2年間に行政処分を受けていない、行政処分の後、重大事故、悪質な道路交通法違反などがないこと、処分に係る所要の措置が履行されていること、行政処分を受けていないこと等の条件に該当する場合は2年を経過する日)をもって違反点数は消滅します。
輸送の安全確保に支障を及ぼす恐れのある重要な法令違反を行った場合には、処分日車数による行政処分と合わせて、事業停止処分が行われ、また、事業者単位の累積違反点数が50点を超過し80点以下となった事業者は、管轄運輸局内のすべての営業所において事業停止処分が行われます。
③ 自動車等の使用停止処分
自動車等の使用停止処分は、原則として、違反営業所に所属する事業用自動車について、処分日車数に基づき、6 ヶ月以内の期間を定めて使用の停止が行われるものです。処分車両数は、所属する事業用自動車の5割を超えないものとし、営業所の所属台数に応じ計算式により算出されます。
使用停止処分を受けた場合、当該車両の自動車検査証の返納、自動車登録番号票の領置(もしくはそれに代わる適切な措置)を行うものとされています。
④ 事業停止処分
事業の停止処分は、以下の輸送の安全確保に関する重大な法令違反があった場合や、累計違反点数が51点以上80点以下となった場合、累積点数が30点以下の事業者の事業所が270日車以上の処分となった場合、累積点数が31点以上の事業者の営業所が180日車以上の処分となった場合等に行われます。
● 貨物自動車運送事業の事業用自動車の運転者の勤務時間及び乗務時間に係る基準が、著しく遵守されていない場合
● 全運転者に対して点呼を全く実施していない場合
● 営業所に配置している全ての事業用自動車について、道路運送車両法に規定する定期点検整備を全く実施していない場合
● 整備管理者が全く不在(選任なし)の場合
● 運行管理者が全く不在(選任なし)の場合
● 名義を他人に利用させていた場合
● 事業の貸渡し等を行っていた場合
● 検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述を行った場合
また、これ以外にも、事業用自動車による、重大な道路交通法違反行為(酒酔い運転、過労運転、過積載等)を行い、事業者が命令、容認していた場合、違反行為に係る指導監督を明らかに実施していない場合なども処分日車数による行政処分等とあわせて事業停止処分が加えられます。
⑤ 許可の取消処分
最も重い行政処分である、事業許可の取消処分は、以下の場合に行われます。
●事業停止処分を過去2年間に3回受けていた事業者が、累積点数に応じた処分日車数によって事業停止処分を受けた場合
● 一つの運輸局管内で累積違反点数が81点以上となった場合
● 使用停止処分や事業停止処分等による自動車検査証の返納命令、登録番号票の領置命令に違反した場合
● 重大な道路交通法違反等によって事業停止処分を受けた事業者が3年以内に同一の違反を行った場合
● 安全輸送に関する命令に従わず、行政処分を受けた事業者が3年以内に同じ命令を受け、再び命令に従わなかった場合
● 有償で旅客運送を行い、かつ、反復的又は計画的なものと認められて、自動車等の使用停止処分を受けた事業者が、当該行政処分を受けた日から3年以内に同一の違反をした場合
● 事業の許可に付した条件(運輸開始の期限に限る)に違反して運輸の開始を行わず行政処分等を受けた事業者が、当該行処分等を受けた後も運輸の開始を行わない場合
● 所在不明事業者であって、相当の期間事業を行っていないと認められる場合
● 欠格事由のいずれかに該当するに至った場合
● 「貨物自動車運送事業法に基づく輸送の安全確保命令の発動基準について」(「確保命令通達」)1.(7)に該当したことにより輸送の安全確保命令を命じられた事業者が、当該命令(特定の違反項目に限る。)に従わなかった場合
● 確保命令通達1.(8)に該当したことにより輸送の安全確保命令を命じられた事業者が、当該命令に従わなかった場合
⑥ 欠格事由、欠格期間
いくつかの条件に該当する者は、貨物自動車運送事業の許可を受けることができないことが定められています。貨物自動車運送業の事業許可の取消を受けた者について、再度許可を得ることができない期間(欠格期間)は、従来は2年でしたが、平成30年12月の貨物自動車運送事業法の改正により5年間に延長されました。また、あわせて、処分逃れを目的として廃業を行った場合や、許可取消を受けた者の密接関係者(議決権の過半数を所有する、資本金の1/2を出資している、事業方針の決定について支配力を有している等)についても5年以内に事業許可を得ることができなくなりました。
⑦ 処分等の公表
輸送の安全確保に資することや、利用者による事業者の選択を可能にするために、行政処分等を受けた事業者、安全確保命令等を受けた事業者の名称や処分内容については、毎月、以下の事項について公表が行われます。
【公表される項目内容】
・行政処分等又は命令の年月日
・事業者の氏名又は名称及び主たる事務所の位置(番地まで)
・行政処分等又は命令に係る営業所の名称及び位置(番地まで)
・当該行政処分等又は命令の内容
・行政処分等又は命令の内容
・主な違反条項
・監査実施の端緒及び違反行為の概要
・ 当行政処分により当該事業者に付された違反点数及び当該管轄区域に係る事業者の累積点数
事業停止、許可の取消処分のほか、社会的に関心が高いと認められる行政処分等については報道機関への資料提供が行われるとともに、国土交通省、各地方運輸局のホームページへの掲載(掲載された月から3年間継続して掲載される)が行われることになります。