特定貨物自動車運送事業について

 特定貨物自動車運送事業は、単一特定の荷主の需要に応じ、有償で、自動車を使用して貨物を運送する事業です(荷主の自家輸送を代行する事業といえます)。そのため、不特定数多数の荷主を対象とする一般貨物運送事業ほど多くの規制が設けられているわけではありませんが、貨物運送事業者としての資質や輸送の安全の確保に関しては一般貨物運送事業と同様ないしは準じた規制が設けられています。

1.事業への新規参入
 事業への新規参入には、事業計画を立て申請することが必要です。
●許可は、特定の荷主ごとに付与され、特定の荷主を新たに追加する場合は、一般貨物運送事業の許可申請が必要です。
● 特定貨物運送事業の経営の許可を申請するに際しては、一般貨物運送事業にほぼ準拠して、事業計画、添付書類、などを提出することが必要です。
● 一般貨物運送事業では著しく供給過剰と認められる場合は、「緊急調整措置」が発動され、新規参入はストップがかけられる措置が設けられています。特定貨物運送事業についても準用されることになっています。

2.事業行動のルール
 特定貨物運送事業の事業行動は、ほぼ一般貨物運送事業の行動ルールに準ずることになりますが、単数の荷主にサービスを提供することを目的としているため、積合せ輸送を実施することができません(特定の荷主以外の貨物を輸送することはできません)。
 また、車両には「特定」の表示が必要です。

3.事業計画の変更
 特定貨物運送事業者が事業計画を変更(営業所・車庫の位置の変更、増車・減車など)する際は、一般貨物運送事業と同様の手続をとることが必要です。

4.運賃・料金
 特定貨物運送事業の運賃・料金は、設定・変更後30日以内に届け出ればよいことになっています。届出書には氏名・住所はもとより、運賃・料金の種類および額、適用方法を記入する必要があります。

5.報告書提出の義務
 特定貨物運送事業は、一般貨物運送事業のように、「事業報告書」を作成し提出する必要はありませんが、「貨物自動車運送事業実績報告書」を毎年7月10日にまでに管轄の運輸支局へ提出しなければなりません。
 また、臨時の報告を求められたときは、様式に従って報告書を作成提出しなければなりません。
 なお、特定貨物運送事業は一般貨物運送事業と異なり、「運送約款」を定め、認可を受ける必要はありません。

6.安全確保のための対応
 安全確保のために定められている「貨物自動車運送事業輸送安全規則」は、一般貨物運送事業と変わるところなく、そのまま特定貨物運送事業にも適用されます。したがって特定貨物運送事業であっても、安全確保に努力しなければならないことは、一般貨物運送事業と何ら変わるところはありません。

7.輸送秩序維持
 法律遵守という点についても、特定貨物運送事業は一般貨物運送事業と何ら変わるところはありません。したがって、過積載を強要した荷主などに対する勧告、監査体制、違反点数制度、さらには行政処分いずれにおいても、一般貨物運送事業と同様の適用が特定貨物運送事業に対して行われます。