総合物流施策大綱(2021 年度~2025 年度)③

(3)総合物流施策大綱策定の意義
物流が果たす社会インフラとしての役割は(1)で述べたとおりであるが、(2)で述べたような課題に対応するにあたり、物流の果たすべき役割の重要性は従来にも増して高まっている。こうした流れは新型コロナウイルス感染症の流行により更に顕著となっている。同感染症の流行に伴う外出や移動の自粛により、交通分野における旅客輸送需要が大幅に減少する中、従来からの電子商取引(EC)市場の急成長に拍車をかける形でいわゆる巣ごもり消費等による通販需要が拡大したことに伴い、宅配便の取扱量が増加し、ヒトに比べてモノの動きは相対的に活発である。
こうした旺盛な需要を支える物流は、現場で従事する人が感染リスクにさらされながらも絶えることなく継続し、人々の生活や医療活動、産業等を支えるエッセンシャルサービスとして、社会に多大な貢献を果たしている。感染症の蔓延を契機に、物流の存在感や社会インフラとしての重要性が飛躍的に高まったといえる。
今後、ポストコロナにおいても、新しい生活様式の定着により、こうした傾向は継続することが想定されるとともに、我が国のみならず、世界的にも同様の傾向が広がることが予想される。
今般の新型コロナウイルス感染症の流行による劇的な社会環境の変化は、これまで進捗しなかった物流のデジタル化や、物流業界における構造改革を加速度的に促進させる誘因となる可能性があり、これらを一気呵成に進めるまたとない好機である。加えて、こうした機を逸せずに、エッセンシャルという位置づけが再認識されている物流の社会的価値を広く一般に浸透させることが必要である。
また、国際目標である SDGsや、カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に向けた動きの加速化、災害の激甚化・頻発化が進む現状等も踏まえ、物流の観点からも、地球環境の持続可能性を高める取組や国民の安全・安心を確保するための取組について、様々な主体を巻き込みながら推進していく必要がある。
以上のような状況を踏まえると、新しい大綱を定め中長期的な視点に立って物流に関する新たな方向性を示すことは誠に時宜を得たものである。本大綱のもと、産官学が連携し、それぞれが社会の環境変化に適応した取組の加速を意識しながら、国民生活と将来の我が国の発展を支えるた
めに不可欠な物流、我が国産業の成長をリードする物流を作り上げていく必要がある。

エッセンシャル