総合物流施策大綱(2021 年度~2025 年度)⑯
(2)労働力不足や非接触・非対面型の物流に資する自動化・機械化の取組の推進
① サプライチェーン全体の自動化・機械化の推進
現状、幹線輸送、物流施設、配送といった各々のプロセスで自動化や機械化が進められている場合が多いが、デジタル化と同様、サプライチェーン全体の取組として推進する必要があり、モーダルシフトや輸送網の集約、サプライチェーン全体でのシステム共有やデータ連携などの取組と合わせた自動化・機械化を推進することにより、物流効率化に向けた相乗効果の発揮を目指す。
② 倉庫等の物流施設における自動化・機械化の導入に向けた取組
倉庫や配送センターなど物流施設においては、ピッキングやパレタイズを自動で行うロボットや無人フォークリフト、無人搬送車(AGV)の活用など、様々な機器やシステムの導入が進んでいる。これらの導入には相応の投資が必要となることから、そのインセンティブとして、国は「自立型ゼロエネルギー倉庫モデル促進事業」など導入支援策を講じているところであるが、改正物流総合効率化法のスキームの活用も念頭にこうした支援を更に強化する。その際、自動化機器の導
入を前提として物流施設を設計する場合は、コストが特に高額になるほか、リース等の多様な方法で調達されることもあり、支援内容が事業者の導入ニーズや実態を踏まえたものとなるよう留意する。
③ 幹線輸送における自動化・機械化の導入に向けた取組
<自動車分野の取組>
トラック隊列走行や自動運転トラックの物流への活用については、ドライバー不足の解消、燃費改善など生産性向上に大きな効果が期待できることから、車両等の安全を確保しつつ、技術開発や実証実験等の取組のほか、イノベーションに対応した道路の将来像について検討を進める。
特に、高速道路での後続車有人隊列走行システムについて、2021 年に商業化していくと共に、より高度な車群維持機能を付加した発展型を開発し、2023 年以降の商業化を目指すほか、隊列走行システムも含む運行管理システムを検討し、高速道路でのレベル4自動運転トラックについて、2025 年以降の実現を目指す。また、ETC2.0 データを活用した官民連携での車両運行管理支援サービスの利活用促進等により、トラック輸送の生産性向上を推進する。
<海運分野の取組>
AI、IoT 等の先進技術の船舶への活用を促進することにより、①陸上からの船舶の常時状態監視、機関故障等の予防保全、不具合発生時の迅速な復旧支援、②気象、海象等の周辺情報に基づく最適な航路、速力等の自動設定等を実現し、より安全かつ効率的な船舶の航行を実現する。また、こうした先進技術を組み合わせた次世代技術開発を推進することにより、海難事故の減少や船員の労働環境の改善等を目的として、2025 年までの自動運航船の実用化を目指す。さらに、実船を用いた自動運航技術の実証結果等を踏まえ、国内向けガイドラインの策定を進めるとともに、国際海事機関(IMO)において国際ルールの策定を主導する。
<航空分野の取組>
空港における地上支援業務の自動化・効率化に向け、2025 年までに空港制限区域内における車両に係るレベル4無人自動運転の導入を目指す。
④ 配送業務における自動化・機械化の導入に向けた取組
配送業務においては、非接触・非対面型の人手を介さない配送機器の導入に加え、AI や IoT など新技術を活用した配送業務の簡素化・汎用化などへの期待が高まっている。これまで相応の業務経験が求められてきた配送業務において、AI を活用して最適な配達ルートを自動作成する取組などが進んでおり、こうした新技術や電子機器を活用した配送業務支援は多様な労働力の確保にもつながることから、これらの取組を積極的に推進する。
ドローン物流については、現状、国や地方自治体の支援などにより離島や山間部等の過疎地域等において配送の実用化に向けた実証実験が行われており、その結果等を踏まえ、持続可能な事業形態等を整理の上でガイドラインとしてとりまとめ、具体的な配送ビジネスの社会実装につなげていく。また、政府は 2022 年度を目途としてドローンの有人地帯での目視外飛行(レベル4)の実現を目指すこととしており、2021 年度までを目途に機体の認証制度、操縦ライセンス制度、運航管理ルールの構築といった制度面での環境整備や社会受容性の確保に向けた取組を推進することとし、都市部でのドローン物流の展開を目指す。
自動配送ロボットについては、米国、中国等と比較して配送での活用に向けた取組は遅れており、今後、社会的受容性を確保しながら、持続的なサービス提供を可能とする必要がある。現在、「遠隔監視・操作」型の低速・小型の自動配送ロボットについては、道路交通法(昭和 35 年法律第 105 号)上の車両区分は原動機付自転車等とされ、道路使用許可を受けて歩道等における実証実験を実施しているところであり、引き続き、公道走行実証などを実施しながら、必要な制度整備を行う。また、自動配送ロボットを用いたサービスが可能となるよう、社会実装に向けた取組を加速させる。
⑤ 中小企業における自動化・機械化を促すための方策
中小の倉庫事業者や運送事業者などでは、コスト負担などから、事前に明確なメリットが確認されない限り、自動化・機械化に躊躇することも想定される。このため、中小事業者による物流 DXの先進的取組やその効果等を整理した事例を公表するとともに、物流効率化の観点から特に秀でた取組を表彰するほか、機械導入等の設備資金に活用可能な金融支援策の利用を促進するなど、中小事業者の取組を促進するための方策を検討する。
⑥ ロボット産業の競争力強化のための環境整備
ピッキング等を行うロボット、AGV、自動配送ロボット等物流業務を補助するロボットに関する技術革新・社会実装は、他業種への応用も含めたロボット産業全体の強化に資することから、技術開発や実証実験等に対する支援を通じて、ロボット産業の競争力強化のための環境整備をより一層進める。