総合物流施策大綱(2021 年度~2025 年度)㉜
④ 物流を支えるインフラや各輸送モードの安全性の確保
<物流インフラの強靭性確保>
地震、豪雨、豪雪、津波等の災害が発生した場合においても安全で安心な生活を支える道路交通の確保を図るほか、ミッシングリンクの解消や高速道路の4車線化、一般道の防災課題解消などを推進し、災害に強い道路ネットワークを構築する。
港湾については、気候変動に起因する外力強大化に伴う高潮・高波により、特に堤外地における浸水の頻発化が懸念される中、基幹的海上交通ネットワークを維持し、臨海部の安全性を確保するため、外力強大化に対応した港湾施設の技術基準等の整備を検討するなど、計画的な対策を講じる。また、暴風による橋梁への走錨船舶の衝突事故を踏まえ、港内避泊が困難な港湾や混雑海域周辺の港湾等において、広域的な視点から防波堤の整備により避難水域を確保する。さらに、大規模地震が発生した際にも、サプライチェーンへの影響を最小限に抑制するため、耐震強化岸壁の整備を推進するとともに、津波対策として防波堤における「粘り強い構造」の導入、津波来襲時における船舶の沖合退避や係留強化等を考慮した港湾の強靭化等を推進する。
加えて、衛星やドローン等を活用して、港湾における災害関連情報の収集・集積を高度化し、災害発生時における迅速な港湾機能の復旧等の体制を構築する。
空港については、自然災害時に緊急物資の輸送拠点としての役割を果たすことができるよう、基本施設等の耐震化、護岸嵩上げ等の浸水対策を推進する。
<インフラの老朽化対策>
道路の老朽化対策として、予防保全を前提としたメンテナンスの計画的な実施や、新技術の導入等による長寿命化・コスト縮減など限られた財源の中で今後加速度的に増加する老朽化するインフラに対応するための取組を強化するほか、過積載車両撲滅のため自動取締りの強化等を図る。また、新たな特殊車両通行手続においては、ETC2.0 等の活用による違反車両の取締り強化及び高度化を図る。
また、港湾施設の老朽化が進む中で、将来にわたりその機能が発揮されるよう予防保全型の維持管理へと本格転換し、ハード・ソフト両面から計画的、総合的な老朽化対策を推進する。具体的には、個別施設計画に基づき計画的かつ効率的に点検や改良工事を行うことにより施設の延命化を図るとともに、老朽化や社会情勢の変化に伴って機能が低下した施設の統廃合やスペックの見直しを計画的に進め、より効率的なふ頭へ再編するなど、戦略的なインフラ老朽化対策の取組を
強化する。その際、全国の港湾施設に係る老朽化データなど、様々なインフラ情報を一元管理するシステム(サイバーポート(港湾インフラ))を構築し、各施設の老朽化の推移を精緻に把握することにより、我が国の港湾全体の老朽化対策費用を見通すとともに、当該見通しを踏まえて事業量を管理することにより、将来にわたる港湾整備費用を平準化する。あわせてコスト縮減効果が見込まれる新技術の活用等を後押しし、維持管理の効率化・高度化を図る。
<輸送の安全確保等>
運輸防災マネジメント指針(令和2年7月策定)を活用して運輸事業者の自然災害対応能力向上を図ることを含め、運輸事業者における安全管理体制の構築を促進するため、運輸安全マネジメント評価を継続的に実施する。特に自動車モードは、災害発生時に緊急輸送や代替輸送の中心的な担い手となるが、事業継続計画(BCP)の策定率が低い傾向にある等の課題があることから、今後重点的に災害対応・事業継続能力の向上を図る。トラックによる交通事故を防止するため、事業用自動車の安全プラン等に基づき、飲酒運転対策や健康起因事故対策など、輸送の安全確保への対策を推進する。また、自動車や車載器等の通信システムを利用し取得した運転情報や、車両と車載機器、ヘルスケア機器等を連携させた総合的なデジタルデータを活用した安全支援システムの普及を図り、更なる事故の削減を目指す。
海運の分野では近年の我が国周辺海域における情勢変化を踏まえ、経済安全保障の早期確立のため、各種税制の実施等を通じて、日本商船隊の国際競争力強化及び安定的な海上輸送の確保に向けた取組を推進する。また、海上輸送全般における安全の確保に加え、海賊発生海域における海賊対策や、マラッカ・シンガポール海峡等の海域における船舶交通の安全対策を講じること等により、国際物流の安全確保に係る対応を強化する。また、近年の台風等の異常気象の激甚化・頻発化の傾向を踏まえ、東京湾等の船舶がふくそうする海域に大型台風等の接近が予想される場合、一定の船舶に対し湾外等の安全な海域への避難等を促し、船舶交通の安全確保を図る。
航空輸送においては、KS/RA 制度について、事業者の負担を踏まえ、その手続や管理運用に重複や非効率が生じないよう、AEO 制度との連携も含めて検討を進めていく。