総合物流施策大綱(2021 年度~2025 年度)㉞
② 農林水産物・食品の輸出促進に対応した物流基盤の強化
2025 年に2兆円、2030 年に5兆円という輸出目標を達成し、農林水産物・食品の輸出立国を実現するため、農林水産物・食品の輸出拡大のための輸入国規制への対応等に関する関係閣僚会議(令和2年 11 月 30 日開催)において取りまとめられた「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」に基づき、輸出先国・地域のニーズや規制に対応する産地が連携して取り組む、大ロット・高品質・効率的な輸出を後押しするため、関係省庁の連携の下、港湾や空港の具体的な利活用等の方策や輸出のための集荷等の拠点となる物流施設の整備・活用、海外におけるコールドチェーンの拠点整備・確保の方策等について、検討する。また、海外向け輸送に適した包材の規格化に取り組むとともに、輸出先国・地域の規制に対応するための HACCP 対応施設などの整備目標を設定し、計画的な施設整備に向けた支援を行う。
③ 地域経済の持続可能な成長に資する物流基盤の強化
地域の農産品を大消費地まで高速バス等による貨客混載で輸送し生産者の安定的な収入を確保する取組など、地域産業の活性化を支えるための多様な物流ネットワークの構築を推進する。また、新型コロナウイルス感染症の影響を受け減少した訪日外国人による地域の消費需要が今後回復することも視野に入れつつ、訪日客の利便性向上に資する手ぶら観光の推進に引き続き努める。
④ 国際物流のシームレス化・強靱化の推進、コールドチェーン物流サービスの国際標準化を含む物流事業者の海外展開支援等
近年のアジア諸国の経済成長等を背景にグローバルサプライチェーンの構築が進展する中、このような成長市場の物流需要を取り込むためには、アジア諸国等における我が国産業の生産拠点及び物流産業の円滑な事業活動を支え、物流のシームレス化を推進することが重要である。特に、経済相互依存関係が緊密化する日中韓の物流は重要な役割を担っていることから、日中韓物流大臣会合の枠組みに基づき、三国間での知見やベストプラクティスの共有、物流情報ネットワークの構築等、シームレスな物流の実現に資する取組を推進する。また、新型コロナウイルス感染症の流行及びそれに伴う世界的な海上コンテナ輸送の需給逼迫や、スエズ運河におけるコンテナ船の座礁事故によりグローバルサプライチェーンの脆弱性が顕在化し、サプライチェーンの強靱化が求められている。この観点から、ASEAN において輸送の複線化・効率化に資する実証輸送を実施し、サプライチェーンの基盤となる柔軟かつ強靱な物流を構築するとともに、日欧 EPA の発効により貨物量が増加する日欧間貨物輸送においても、海上輸送・航空輸送に続く第三の輸送手段の選択肢として、シベリア鉄道の利用促進に向けた取組を実施する等、強靱なサプライチェーンの構築を図る。さらに、「南回り航路」に比べて短く、海上輸送ルートにおける新たな選択肢として期待されている北極海航路について、利用動向等に関する情報収集や産学官による協議会での情報共有を図る等、利活用に向けた環境整備を進める。
物流事業者の海外展開については、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う巣ごもり消費の拡大により、冷蔵冷凍食品の消費量がより一層増加し、コールドチェーン物流の重要性・ニーズが高まっている状況を踏まえ、ASEAN をはじめとする新興国において我が国の高品質なコールドチェーン物流サービス等の国際標準等の普及を推進するとともに、物流に関する規制やインフラ等の改善に向けた働きかけや官民ファンドの活用により、質の高い我が国物流システムのソフト面・ハード面での展開を支援する。