交通政策基本計画㉒

<取組内容を今後新たに検討するもの>
○我が国の交通関連企業の海外進出に当たり、進出先の国・地域において我が国の質の高い交通システムがスムーズに導入・運用されるよう、現地の人材や日本で勉学する留学生に対する研修・セミナーの実施など、現地の有能な人材の確保・育成を検討する。
基本的方針C.持続可能で安心・安全な交通に向けた基盤づくり
首都直下地震や南海トラフ地震の発生が切迫していると予想されていること、近年、雨の降り方が局地化・集中化・激甚化していることなどを踏まえ、大規模な災害が発生した場合における交通の機能低下を可能な限り抑制するとともに、その迅速な復旧を図るための対策を可及的速やかに進め、交通機能を維持していくことは、国民の生命財産を保護する上で極めて重要である。また、高度成長期以降に集中的に整備されたインフラや設備の老朽化の状況を踏まえ、中長期的なトータルコストの縮減・平準化を図りつつ、その維持管理・更新を確実に実施することが必要となっている。
これらについては、社会資本全体を通じた大規模災害対策及び老朽化対策の一環として、遅滞なく取り組む必要があるが、さらにそれらと連携しながら、次に掲げるような交通に固有の対策を進めることにより、持続可能で安心・安全な交通を実現する必要がある。まず、災害軽減のためのシステム導入や、いわゆる帰宅難民対策も含めた災害発生時の避難誘導や迅速な機能回復に向けたオペレーション等の災害発生前後の対応についても十分な対策を講じることが必要である。
また、近年、交通における事故やトラブルの多発、さらには労働力不足に伴うサービス水準の低下などが問題となっており、持続可能で安心・安全なサービスを供給できる健全な事業体制の確保が必要である。このため、交通事業者の事業基盤をより強固なものとしていくことが不可欠となっている。
さらに、エネルギー・地球環境問題への対応も引き続き必要であり、我が国の CO2 排出量の2割弱を運輸部門が占めていることに鑑みれば42、これらの対策を進めていくことは喫緊の課題と言うことができる。
バス事業の運転者(男性)の労働時間は全産業平均の約 1.2 倍と長く、所得は全産業平均の約 0.8 倍と少ないため、大型二種免許保有者数の減少とあいまって、労働力の確保が課題に。女性のバス運転者(乗合・貸切)の割合も1%台にとどまっている。航空機操縦士のアジア/太平洋地域における需要は、2030年には現在の約 4.5 倍に増加見込み。
民間バスの約7割、地域鉄道事業者の約8割が赤字の実態。
運輸部門における二酸化炭素排出量は、京都議定書目標達成計画における目安目標値は達成済み(2012年度実績2億 2,600 万トン・・2010 年度目安目標2億 4,000 万トンを5年連続達成)自動車の燃費については、2004 年度から 2011 年度までに 32%改善(2020 年度目標の新基準を策定済)。
上記に加え、環境負荷の少ない新たなエネルギーの導入に向けた輸送ルート確保など、排出量削減とは違った角度での取組も進め、持続可能な交通に向けた環境を整備することが求められている。
これらの災害や老朽化、人材不足、環境負荷に対する取組は、既出の基本的方針A及びBに基づく取組を支える意味を持つものとして、積極的な位置付けの下で進めることが重要である。

(運輸事業その他交通に関する事業の健全な発展)
第二十一条 国は、運輸事業その他交通に関する事業の安定的な運営が交通の機能の確保及び向上に資するものであることに鑑み、その健全な発展を図るため、事業基盤の強化、人材の育成その他必要な施策を講ずるものとする。
(大規模な災害が発生した場合における交通の機能の低下の抑制及びその迅速な回復等に必要な施策)
第二十二条 国は、大規模な災害が発生した場合における交通の機能の低下の抑制及びその迅速な回復を図るとともに、当該災害からの避難のための移動を円滑に行うことができるようにするため、交通施設の地震に対する安全性の向上、相互に代替性のある交通手段の確保、交通の機能の速やかな復旧を図るための関係者相互間の連携の確保、災害時において一時に多数の者の避難のための移動が生じ得ることを踏まえた交通手段の整備その他必要な施策を講ずるものとする。
(交通に係る環境負荷の低減に必要な施策)
第二十三条 国は、交通に係る温室効果ガスの排出の抑制、大気汚染、海洋汚染及び騒音の防止その他交通による環境への負荷の低減を図るため、温室効果ガスその他環境への負荷の原因となる物質の排出の抑制に資する自動車その他の輸送用機械器具の開発、普及及び適正な使用の促進並びに交通の円滑化の推進、鉄道及び船舶による貨物輸送への転換その他の物の移動の効率化の促進、公共交通機関の利用者の利便の増進、船舶からの海洋への廃棄物の排出の防止、航空機の騒音により生ずる障害の防止その他必要な施策を講ずるものとする。