総合物流施策大綱(2021 年度~2025 年度)⑦

Ⅱ.物流を取り巻く現状・課題と今後の物流施策の方向性
(1)前大綱策定以後の物流を取り巻く環境の変化

4)物流における新技術の導入の進展
我が国の物流においては、技術革新やデジタル化が遅れているという指摘がある一方、社会実装の条件が整いつつあるドローンや自動運転については官民連携により実用化やビジネスモデルの構築に向けた取組が進んでいる。また、民間事業者において、AI や IoT 等の新技術をサプライチェーン上に組み込み、一層の物流生産性の向上を図る動きも活発になりつつある。
ドローン物流については、離島や山間部、過疎地域における荷物配送や災害時の物資輸送など、地域における社会問題の解決も見据え、2018 年度以降、実証事業の実施を含め国による実用化に向けた支援が実施されている。また、自動運転については、高速道路でのトラック隊列走行技術の実証実験を実施してきたところであるが、2021 年2月には新東名高速道路の一部区間において後続車の運転席を実際に無人とした状態でのトラックの後続車無人隊列走行技術を実現した。さらに、物流・商流のデータを見える化し、個社・業界の垣根を越えてデータを蓄積・解析・共有する「物流・商流データ基盤」を構築し、物流の抜本的な生産性向上を図る取組も実践されつつある。
そのほか、物流事業者の取組として、物流拠点における無人搬送車(AGV)や自動倉庫等の導入が積極的に進められているほか、配送業務において、スタートアップ企業が開発したソフトやシステムを活用した配達業務支援や自動配送ロボットの実証事業が行われるなど、新技術を既存の物流システムに融合する先進的な取組も進展している。
なお、この間、世界の物流をめぐる動向はめざましい変化を見せており、AI、IoT 等の新技術の進展も見据えた全く新しい物流の考え方も現れている。例えば、貨物情報や車両・施設などの物流リソース情報について、企業間情報交換における各種のインターフェイスの標準化を通じて、企業や業界の垣根を越えて共有し、貨物のハンドリングや保管、輸送経路等の最適化などの物流効率化を図ろうとする考え方(フィジカルインターネット)が注目を集めているほか、現実世界に存在する様々な情報をリアルタイムに収集し、当該情報を元に仮想空間上に現実世界と全く同じ状況・状態を再現し、その仮想モデルを用いた高度なシミュレーションを行う技術(デジタルツイン)の実用化にも期待が集まっている。
我が国の物流産業が国際競争に伍していくため、さらには我が国全体の国際競争力を維持、向上させていくためにも、こうした動向に常に注目し、世界に先んじてこうした最先端の技術や概念を取り入れた物流システムを構築していく努力も求められる。