総合物流施策大綱(2021 年度~2025 年度)㉘
3:強靱性と持続可能性を確保した物流ネットワークの構築
(強くてしなやかな物流の実現)
昨今頻発している豪雨や台風などに起因する大規模災害や、今般の新型コロナウイルス感染症の流行により、サプライチェーンの途絶がクローズアップされている。幹線輸送、物流施設、配送網そして国際物流も含め、物流ネットワークの強靭性・持続可能性の確保は喫緊の課題である。
このため、道路や港湾等の物流インフラの耐震化や老朽化対策など、ハードそのものを強靭にしていくことに加え、代替輸送ルートの確認や、有事の際の関係者間での連絡体制や調整スキームの構築など、平時から行うソフト面での対応が非常に重要である。こうした取組に当たっては、生活必需品の在庫や緊急物資の運送状況などの情報が瞬時に共有されるような仕組みの構築も重要であるほか、実際に物資の輸配送を遂行する担い手の存在が必須であり、緊急時においても働きやすい環境の整備が必要である。また、災害時に発生する廃棄物の処理方法についても事前に関係者間で確認しておくことが早期復旧の観点から重要である。こうした点を踏まえつつ、災害や感染症流行等の有事においても強靭性や弾力性を確保した物流ネットワークの構築を目指すべきである。
また、国際社会の保護主義的な動きや新型コロナウイルス感染症の影響など国際経済の不確実性が増す中にあって、我が国産業の国際競争力を物流面で支える取組も重要である。そのためにも、強靭なサプライチェーンを支えるインフラ整備の促進、特に農林水産物・食品輸出の積極的展開に必要な物流基盤の整備は重要である。加えて、サプライチェーンの多元化や本邦企業の生産拠点整備などに柔軟に対応できる物流ネットワークの構築、成長著しいアジア等からのトランシップ貨物等物流需要の取り込み、物流事業者の国際展開に対する支援なども重要な施策である。
さらに、我が国のカーボンニュートラル、脱炭素社会に向けた動きが加速し、また SDGsなど国際目標への対応も必要とされる中、持続的な地球環境を作り上げていくため、物流産業における低炭素化・脱炭素化やゼロエミッションの確立に向けた取組など、環境対策についても最大限取り組む必要がある。
国際情勢の大きな変化や有事であっても物流が持続可能であることは、我が国の経済や国民生活を支える条件として欠かせないものである。どのような状況にあっても維持される強靱性・弾力性を確保した、いわば「強くてしなやかな物流」を実現することが必要である。