事業行動のルール <全ト協ハンドブックより>
(1)自動車への表示が必要
営業用トラックは、緑ナンバーであることだけではなく、いくつかの必要な事項を車両の外側に明記しなければなりません。
まず、その車両の使用者(代表者)の氏名か名称(会社名)を明記することが必要です。このほか、その車両の事業区分(車両の使用目的ともいえます)を表示しなければなりません。
その区分は次のようになります。
表示区分 /事業区分
運 行/ 特別積合せ運送用に使用する運行用(幹線)車両
限 定/ 限定事業用の車両
特 定/ 特定貨物輸送事業用の車両
通 運 /貨物利用運送事業法の第二種貨物利用運送事業のうち鉄道運送事業に係るもので使用する車両
航 空 /第二種貨物利用運送事業のうち航空運送事業に係るもので使用する車両
海 上 第二種貨物利用運送事業のうち船舶運航事業に係るもので使用する車両
これらの2文字を車両の両サイドにわかりやすく表示することも義務づけられています。
また、用途が限定されていない一般貨物運送事業用の車両については表示義務が廃止されています。
(2)1台の車両で貸切りも積合せも併用可能
一般貨物運送事業者は、1台の車両に1荷主の貨物だけを積む貸切り運送も、複数の荷主の貨物を一緒に乗せる積合せ運送もすることができます。これは、大型車であろうと小型車であろうと自由にできます。したがって、対象とする需要が小口か大口かで、車両をうまく活用することができます。
1台のトラックを「今日は貨物が沢山あるから貸切り」に、「今日は貨物が少ないからAとBとCの荷主の貨物を積合せ」にと使い分けることは可能ですから、積載効率を考慮して貸切りか積合せかを使い分けるのが望ましいわけですが、運賃面から得策であるか否かを考慮することも必要といえます。
(3)自社の営業所間での車両相互利用するときは届出が必要
一般貨物運送事業用の車両は基本的に営業所に所属することが前提となります。したがって、同じ会社の車両といえどもA県とB県にある別々の営業所に配属されている車両を、自由に融通しあうことは、違法になります。たとえ短期間でもその際は増車・減車の届出を行う必要があります。
また、同じ県内にあるA営業所とB営業所の車両であっても、自由に相互利用することはできません。この場合においても、増車、減車の手続が要となります。
これは、営業所相互間の車両融通が営業所ごとの最低車両台数・車庫設置条件に抵触してくるからです。
ただし、引越シーズン、夏季繁忙期、秋季繁忙期、年末年始繁忙期の定められた一定の期間について、運行管理や車両管理を引き続き元の営業所で行う場合には、届出をすることなく、業務の応援のため同一事業者の他の営業所に事業用自動車を配車することが可能です。この場合は、期間終了後は配置元の営業所に事業用自動車を戻さなければなりません。
そのほか、ドライバーの労務負担を軽減する方法のひとつとして『中継輸送』があり、所定の手順を行うことで、自社の営業所間での車両の相互利用を行うことができます。
(4)車両・運転者を借りる場合の注意事項
一般貨物運送事業者同士で車両のみを貸渡したり、提供したりすることは、互いの事業者が増車・減車の届出をするかぎり可能です。しかし、運転者を派遣することは、「労働者派遣事業の適正な運営の確保および派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」における派遣事業者からのものについてのみ認められ、期間も限定されていることに注意する必要があります。
増車・減車の届出をして実施するほど長期ではなく、週ごとの、あるいは月ごとの貨物量の波動に対応するため、他の運送事業者の車両を利用したい場合は、下請けに出すことができます。また、Aという一般貨物運送事業者が、火曜日と木曜日だけ貨物量が増えて、自社の車両だけでは足りなくなったとします。火、木の物量に合わせて増車したのでは、採算がとれそうもないというケースでは、火、木だけBという別の運送事業者から運送事業用の車両をチャーターすればよいわけです。B社は、A社の取引荷主の貨物を運び、
その運行管理などの業務はB社自身が行うことになります。B社はあくまでA社の替わりとして輸送し、そこでの管理義務や運送責任はB社が持つわけで、A社はB社に対し一種の“荷主=元請け”の立場に立つということができます。
ところでこの場合、A社は何の手続も資格もいらないかといえばそうではなく、A社は貨物自動車運送事業法に規定された貨物自動車利用運送の事業計画変更認可を受けていることが条件となります。短期にせよ、単発的にせよ下請事業者を活用するときは一般貨物運送事業者は上記の手続が必要となります。
また、事業用自動車の保有については、メンテナンス・リースを含めて一定の使用権原を持つことによって認められます。
なお、メンテナンス・リース車両の保有の場合でも、点検および整備の義務は当然生じます。
(5)輸送の安全に係る義務
(改正事業法により、事業用自動車の定期的な点検及び整備その他事業用自動車の安全性を確保するために必要な事項を遵守することが追加【令和元年11月施行】)
事業用自動車の定期的な点検・整備のほか、車両の安全性を確保するために必要なことを下記の国の定める基準に沿って行わなければなりません。
① 道路運送車両法に従って保安基準に適合するよう車両を維持すること。
② 車両の構造、装置、使用条件(道路状況、走行距離等)を考慮して定期点検の基準を作成し、点検・整備すること。
③ 点検・整備した時には、道路運送車両法の規定と同じように記録簿に記載・保存すること。
④ 車両の使用の本拠ごとに、点検・清掃のための施設を設けること。
⑤ 道路車両運送法に従って選任した整備管理者のうち、以下に該当する者に地方運輸局長が行う研修を受けさせること。
●整備管理者として新たに選任した者
●最後に当該研修を受けた年度の翌年度末を経過した者
(6)事業の的確な追考のための遵守義務
(改正事業法により、下記の①及び②が追加【令和元年11月施行】)
① 車庫の整備・管理
保有する全ての車両を収容し、その車両の点検と整備を適切に行うために十分な規模の車庫を備えなければなりません。
② 健康保険法等により納付義務を負う保険料等の納付
健康保険法等により納付義務を負う保険料等を納付するとともに、貨物の運送に関し支払う可能性のある損害賠償の支払い能力を持っていなければなりません。